効率的に家庭学習する方法【福井県敦賀市『ワクノソト』】

 オルタナティブ・スクール『ワクノソト』の三國雅洋です。

 どれだけ真面目に授業を聞いても、どれだけ真面目に宿題をしても、家庭学習の方法がよくないと成績は上がりません。

 もちろん、「学業成績は、社会における生産性や幸福感とは、ほぼ無関係である」との統計もあります。ですから、学業成績が悪くても「生きる力」は身につく可能性はあるので、心配ありません。

 ただ、学業成績は自己肯定感・自己効力感に大きく影響を及ぼしてしまうのも、確かです。

 そこで、学業成績に一番大きな影響を持つ家庭学習の方法について、簡単に書きますね。

【1】やる気はどこから出るのか

(1)やる気が起きない原因

 家庭学習で一番の問題点は、”やる気が起きない”という点です。「やらなければいけないのに、勉強できない」という悩みが、一番多いのです。

 では、やる気が起きない原因は何かと言えば、大きく分けて2つしかありません。

(1)ゴールが設定されていないか、不適切なゴールが設定されている。

(2)ゴールを達成できる自信がない。

「なぜ」「何のために?」のように意義を考えるとやる気が出ることがわかっています。ゴール設定は、やる気を引き出す出発点として必須です。

(2)適切なゴール設定をする

 そして、ゴールは①「want to(~したい)」であり、②「現状の外側」である必要もあります。①「want to」とは「~したい」と思うことです。簡単に言えば達成したいと思うことであることです。さらにゴールは②「現状の外側」に設定する必要があります。現状の外側とは「現状維持では絶対に達成できないこと」ということです。

 まとめると、ゴールは「現状維持では絶対に達成できないけれど、達成したいと思うこと」である必要があります。常識的に考えてほしいのですが、達成したくないことをゴールにしてやる気なんて出ますか?それに、現状維持で達成できることなら無理にやる気出す必要なんてないですよね。だから、「want to」と「現状の外側」は必須の条件となります。

(3)自己効力感を高める

 しかし、適切なゴールが設定されていてもそれだけではやる気は出ません。そのゴールを達成できる自信がないといけないのです。心理学で有名な言葉に「学習性無力感」というものがあります。これは「僕(わたし)には無理!」ということを、学習してしまった状態です。無力感を学習してしまったから、「学習性無力感」と言います。

 一方で、達成可能性が50/50のとき、やる気がもっとも出やすいことも実験で確かめられています。つまり、自信の有無によってやる気が変わるわけです。

 だ~か~ら、子供に「バカ」とか言っちゃだめなんですよ!!!!!子供の自信を奪って、やる気を起こそうなんて、それこそ××ですよ。

(4)やる気を高めるためにするべきこと

 まとめると、やる気を出したければ「達成したいけれど現状維持では達成できないゴールを設定して、そのゴール達成ができると思うように働きかけること」となります。

 ですから、やる気を高める働きかけは次の2つです。

1 適切なゴール設定がされるようにする

2 自己効力感を高める。

 まずは適切なゴール設定をするためのステップを説明します。

ステップ1 子どもの「不満」を確認する

ステップ2 子どもの「不満」を反転させて、「望み」を推測する

ステップ3 子どもの「望み」を包摂するゴールイメージを作る

 ステップ1では、子どもの不満を確認します。子供がどんなことでイライラするか、どんなことで怒るかをすべて書き出しましょう。10個ぐらいは書き出してください。

たとえば、次のようなものになるかもしれません。

・数学の点数が低い。

・理科の点数が低い。

 次のステップでは、これらの「不満」を反転させて「望み」を推測します。

・数学でよい点数を取る。

・理科でよい点数を取る。

 最後にこれらの「望み」をまとめて、ゴールイメージを作ります。これはイメージですので、頭の中で描けるのが理想です。また、これは保護者側のゴールではなく、子供自身のゴールを推測したものであることに注意してくださいね。

・理数系科目に対して得意意識を持っており、実際によい点数を取っている。

 このようにして、ゴールイメージを作ります。

 次に、子供がこのゴールイメージを達成できると思えるように、働きかけていきます。

 このための方法論はとても簡単です。「まるで子供は将来そのゴールを達成するかのように振る舞う」もしくは「子供にはゴールを達成する能力があるかのように振る舞う」だけです。子供がゴール達成に近づいたら「さすが(あなたらしい)」と伝え、子どもがゴール達成から遠ざかったら「あなたらしくない」「珍しい」と伝えましょう。理数系でよい点数を取ることがゴールであると推測したら、理数系科目の学習に取り組んでいるときに「さすが」「すばらしい」と伝えます。ゴールに向かっていること、もしくはゴール達成に向けて能力を磨いていることが「あなたらしい」と伝えるのです。このような言葉は、あなたの中での確信度が高まれば高まるほど自然と出てくるようになります。

【2】何からすればよいのか

 やる気の出し方が分かったところで、次は「何からすればよいのか」をお話ししたいと思います。

 これはその子の「ゴール」と「現状」によって、大きく変わってきます。その子のゴールが藤島高校にトップ合格することで、現在中学2年生で平均点が70点なら、まず進路指導の先生を説得しなければならないという面倒な作業があるので、確認・期末テスト対策を勧めると思います。そして、そのためにやることは数学なら章末問題をスラスラと解けるようにすること、英語なら教科書の英語本分をスラスラと書けるようにすることなどを勧めるでしょう。

 方法は「目的」と「状況」によって決まります。ですから、まず最初にやってほしいのは「ゴール」と「現状」の確認です。

 そして、もし定期テストや確認テストが60点以下だったら、教科書を大切にすることを伝えます。ここでも何度か書いていますが、数学、理科は、本当によく教科書ができています。数学について言えば例題下の「問題」の解答がなかったり、訳が分からんところもあるのですが、全体としてはすばらしいテキストです。教科書だけで80点まではいけます。理科もすばらしく、教科書だけで十分です。英語は教科書ガイドが必須だと思います。教科書ガイドがないと、英文を写したりするなど無駄な時間が増えます。社会は残念ながら、ワークが必須です。教科書はとてもよくまとまっていますが、適度なレベルの設問がないからです。国語はそもそも「国語は何を目的として何を学んでいるのか」を知らない生徒のほうが多いので、まずはそこを学びましょう。気が向いたら、このブログでも書いていきます。

【3】どのようにやるのか

 どのように勉強するかについても、「目的」と「状況」によって大きく変わってきますが、基本は「わかったつもり」を目指すフェーズと、「わからない」を目指すフェーズの2つに分かれます。

 「流暢性の幻想」と呼ばれる心理学的な現象があります。これはざっくり言えば、人間の脳はすぐに「わかったつもり」になるということです。「この子はすぐにわかったつもりになる」とおっしゃる保護者の方が多いですが、それは誰でもそうだということです。

 人間は誰でもすぐに「わかったつもり」になります。ですから、それ自体は悪いことではありません。大切なことはすぐに「自己テスト」をすることです。

「自己テスト」とは、自分の理解度を確認するテストのことです。たとえば、問題を解いたり、暗証をしようとしたりすることです。これがあることで、人間は失敗をすることができ、知識の定着度合を確認することができます。そもそもテストというのは、そのために実施されるものですよね。

 もう少し具体的に言えば、英単語のスペルを覚えたいときは、英単語を隠して書いてみるのが自己テストです。もしくはスペルを暗唱したりしてもよいでしょう。大切なことは「答えを見ないで書くこと」です。テストですからね。答え見ながら書いたら、テストじゃないでしょう。

 ここでも大切な脳の性質を1つお教えしておきます。人間の脳は「失敗駆動型」です。予想外のことが起きたとき、失敗した!と思ったとき、感情が生じてそれを記憶しようとします。反対から言えば、そういう予想外のことが起きないかぎり、わざわざ覚えようとはしません。人間の脳は、かなりの手抜き器官だというのがわかっていて、心理学ではそれを「認知的倹約家」と呼びます。簡単に言えば、エネルギー消費に関して脳は「ケチ」なんです。

 ですから、何かを覚えたいときは正解は隠した状態にしておくことが重要です。これは人間の脳の性質上、必須のことです。

 ただ、これでは1つ1つを覚えて行かなくてはならないことになります。それはとても非効率的ですね。覚えるなら、まとめて一気に行う必要があります。そのための具体的な方法も、14日(日)のセミナーでお伝えしたいと思います。

【4】どのくらいすればよいのか

 最後に、どのくらい勉強すればよいのかですが、これは毎日30分で十分です。基本的に合格率30%ぐらいまでなら、3ヶ月30分の勉強時間で足ります。具体的には簿記2級程度なら、毎日30分、3ヶ月間勉強すれば独学で行けます。ITパスポートも、それぐらいでしょう。

 逆にいえば、もしそれ以上の勉強時間をとっていて、成果が出ていないなら勉強方法に問題ありだと言い切ってよいです。

 家庭学習の方法というのは、普段勉強している人じゃないと分かりません。私はいまでも月に100冊の本は読みますし、専門分野の勉強もしています。そして、教える仕事もしています。だからこそ、言えるのです。

 誰だって同じ脳を持っていますし、同じ脳の仕組みを持っています。大切なのはその使い方です。

 学校の勉強にはコツがあって、そのコツが分かれば簡単にできるようになります。保護者の方が来ていただいて、そのコツを実感していただけたらと思っていますので、ぜひセミナーにお越しください。

 https://www.facebook.com/events/154441351997232/

 

カラフル ~ふ登校カフェ~(親の会) &ワクノソト☆ 福井県敦賀市

福井県敦賀市で活動する不登校の親の会(誰でも参加できるお話会など開催)&学校教育の枠(ワク)の外に出てみよう!福井県敦賀市にあるフリースクール『ワクノソト☆』のホームページです。ワクノソトは休校中です。

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