ゴールが明確化されて、現状を把握しても、やる気が出てくるとは限りません。
高校受験に合格するには、やる気を引き出す技術は欠かすことができません。
ここでは「短期的なやる気」と「長期的なやる気」に分けて、それぞれ引き出す方法をお伝えします。
【1】短期的なやる気を引き出す
短期的なやる気を引き出すには「作業興奮」という現象を利用するのが一番です。
「やる気は、やり始めると出てくる」という減少を、「作業興奮」と言います。
(1)やる気はやり始めると出てくる
やる気は、やり始めると出てくるものです。これは「作業興奮」と呼ばれます。
《この現象はクレペリンという心理学者が発見して「作業興奮」と呼ばれています。作業しているうちに脳が興奮してきて、作業に見合ったモードに変わっていくという。》
(『海馬/脳は疲れない』 池谷 裕二,糸井 重里)
勉強をしはじめることで、勉強に適した脳のモードに入っていきます。
ですから、勉強を始めやすいようにすることが勉強のやる気を引き出すことにつながります。
(2)キッチンタイマーを使う
勉強を始めやすくする工夫の1つで、お勧めのものがキッチンタイマーを使うことです。
キッチンタイマーで15分ほどの時間をセットして、スタートボタンを押すと同時に勉強を始めるのです。
時間制限を設けることで、勉強を始めることへの心理的負担を小さくできます。
また、集中が切れた状態でダラダラと続けてしまうことも、避けやすくなります。
(3)「飽き」は脳が疲れているサイン
作業興奮でやる気を引き出しても、「飽き」は必ず出てきます。
集中が切れたら、すぐに別の教科に取り組む習慣をつけましょう。
「飽き」は、脳の回路が疲れたサインです。
「飽き」が出てきている状態で勉強をしても、学習効率はよくありません。
区切りのいいところまでしたくなる気持ちは分かりますが、あえて中途半端なところで終わるようにしましょう。
中途半端なところで終えるようにすることで「ツァイガルニク効果」を使うことができます。
(4)「ツァイガルニク効果」を利用する
「ツァイガルニク効果」と呼ばれる心理効果があります。
ツァイガルニクという人が発見した人間の性質で、簡単に言うと「人は、始めたことを完了させたがる」というものです。
《ツァイガルニクは次のように結論づけた。「作業を完了させたい欲求は、最初のうちはうわべだけのものかもしれない。しかし、その作業に夢中になるうちに、本物の欲求が生じる」》
(『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!』 著 ベネディクト・キャリー 、翻訳 花塚 恵)
勉強を中途半端なところで中断しておくことで、「完了させたい」という欲求が生じます。
そのため、区切りのよいところで中断した場合に比べて、勉強を再開しやすくなるのです。
また、勉強を再開すれば、また「作業興奮」によって脳が勉強に適したモードになっていきます。
「作業興奮」と「ツァイガルニク効果」を利用することで、勉強に適した脳の状態を続けやすくなるのです。
【2】長期的なやる気を引き出す
「作業興奮」と「ツァイガルニク効果」で短期的なやる気を引き出すことはできます。
しかし、長期的なやる気を引き出すには、この2つだけでは足りません。
長期的なやる気を引き出すには、適切なゴール設定が必要です。
(1)適切なゴールを設定する
適切なゴール設定がされることで、長期的なやる気を引き出すことができます。
適切なゴール設定とは、次の2つの条件を満たすもののことです。
(1)現状維持では達成できないゴールであること
(2)自分にとって重要度が高いゴールであること
現状維持で達成できるゴールでは、現状維持を続けてしまいます。
そして、本人にとって重要度が低いゴールでは、やる気が出てきません。
(2)現状維持では達成できないゴールを設定する
現状維持でも達成できるゴールでは、現状打破する必要性がありません。
現時点で偏差値が50であり、志望校の偏差値も50であれば、現状維持でも志望校に合格できるでしょう。
これまで以上に勉強に取り組む必要性がないのであれば、現状維持をしてしまうのが人間です。
どれだけ足が速い人でも、走る必要性がなければ歩いています。
どれだけ頭がよい人でも、考える必要性がないときは何も考えずに過ごしています。
勉強する必要性があるからこそ、勉強へのやる気が生まれるのです。
現状維持で達成できるようなゴールでは、勉強をやる気は出てきません。
(3)自分にとって重要度が高いゴールを設定する
「現状維持では達成できないゴール」であり、かつ「自分にとって重要度が高いゴール」であることも必要です。
そのゴール達成が自分にとって重要であればあるほど、やる気は出てきます。
アーティストの大ファンは、何千円も支払ってチケットを購入し、ライブ会場にまで足を運びます。
ファンにとってそのアーティストが重要であるからこそ、このような費用と労力を払うのです。
自分にとって重要だからこそ、時間・労力・お金などのコストを注ぎ込みやすくなるのです。
保護者にとって、その志望校がどれだけ重要であるかは、まったく関係がありません。
自分にとって重要であるゴールを、ゴールに設定しましょう。
(4)ゴール設定とは重要度を高めること
ゴール設定とは、自分にとっての重要度を高めることです。
志望校合格という目標を定めるということは、志望校合格に有効なものを、これまで以上に重要視するということです。
保護者から「勉強する時間よりも、Youtubeを観ている時間のほうが長い」という相談を、よく受けます。
これは、その生徒にとって、勉強よりもYoutubeのほうが重要度が高いということです。
反対から言うと、その生徒の無意識にとって「志望校合格」は「Youtube」よりも重要度が低いのです。
ただゴールを設定するだけでは意味がありません。
ゴール設定をしたら、そのゴール達成に必要な行動の重要度を高める必要があります。
そのためには、セルフトークのコントロールという技術が役に立ちます。
(5)セルフトークをコントロールする
セルフトークとは、心の中の声です。
本を読むとき、心の中で音読をしている人が多いと思います。
その心の中の声をセルフトークと呼ぶのです。
そのセルフトークをコントロールすることを、セルフトークのコントロールと言います。
セルフトークのコントロールの基本は、うまく行ったとき「自分らしい」と言い、うまく行かなかったときは「自分らしくない」と言うことです。
たとえば勉強を始めることができたら「自分らしい」、「さすが私」と、心の中で思うようにします。
そして、Youtubeを見続けている自分に気づいたら「私らしくなかった」と思うようにするのです。
「ゴールに近づいている自分」を「自分らしい」と心の中で評価し、「ゴールに近づいていない自分」を「自分らしくない」と評価するのです。
ゴールに近づくことが重要で、それ以外は重要でないことを、セルフトークを通して自分に語りかけていきます。
(6)自己効力感を高める
ゴールがどれだけ重要であっても、ゴールを達成できる自信がなければやる気はでません。
現時点で500点満点中200点だったとして、450点を目指そうとしても、なかなかやる気は出てきません。
自分にそのゴールを達成できる能力があると思えないことが多いからです。
この「自己のゴール達成能力に対する自己評価」を自己効力感と言います。
自己効力感を高めないと、やる気は出てこないのです。
先ほどのセルフトークのコントロールは、自己効力感を高めることにも使えます。
自分の能力を低く見積もるセルフトークには「自分らしくない」と思うようにしましょう。
たとえば「私は頭が悪い」と思ったら、「こんなことを思うなんて、私らしくない」と、心の中で反論するようにするのです。
(7)〇だけをつける
自己効力感を高める具体的な方法として、「〇だけをつける」という方法があります。
問題を解いたとき、多くの人は〇、×、△の印をつける癖があります。
しかし、本来、〇以外を付ける必要性はありません。
〇がついていないのであれば、解けるようにする必要性があるからです。
×であっても、△であっても、〇でない以上は解けるようにしなければ点数は上がりません。
〇だけをつければ足りるのですから、〇だけをつければよいのです。
初見で正解した問題にだけ〇をつけましょう。
解き直して正解しても、当日は〇はつけないようにしてください。
テストの問題は通常、すべて始めてみるものばかりです。
初見で問題が解けるようになってこそ、点数につながります。
ですから、初見で問題が解けたときだけ、〇をつけましょう。
(8)「さすが」と「もっと」
初見で問題が解けたときは、「さすが私」とセルフトークをするようにしてください。
その上で「私ならもっと早く解ける」、「私ならもっと難しい問題も解ける」のように「もっと」を使ったセルフトークも行いましょう。
「さすが」と「もっと」を使うことで、自己効力感を青天井で高めていくことができるようになります。
(9)「おしい」と「ナイストライ」
初見では正解ができなかったときは「おしい」、または「ナイストライ」とセルフトークをしましょう。
不正解であっても、×や△の印をつけないようにしてください。何も印をつける必要はありません。
×や△の印をつけると「一度解いたことがあるから、今は解けるはずだ」と勘違いをしやすくなります。
また、×や△の印をつけることで苦手意識が強まってしまいます。
×や△などの印をつけてもよいことはありません。
「おしい」、「ナイストライ」と自分が挑戦したことを評価し、次の問題に取り掛かりましょう。
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