フリースクール『ワクノソト☆』の三國雅洋です。
今回は、効率的な自宅学習の方法についてお話しします。
新型コロナウイルスの影響によって、自宅学習の方法論がとても大切になりました。少しでも参考になれば幸いです
【1】導入期・専門期・発展期
北村勝朗先生が書いた『300人の達人研究からわかった 上達の原則』と言う本があります。
この本の著者の北村勝朗先生は、《教授学習心理学領域を中心とした研究を20年来継続して行っている》教育の専門家です。
https://researchmap.jp/read0168167
北村先生の上記書籍には、次のように書かれています。
結論として言えるのは、「卓越したレベルの技能と経験を獲得するためには累積1万時間以上10年以上継続した演習が必要」ということだ
そして、次のようにも書かれています。
1万時間の練習時間は、「導入期」「専門期」「発展期」という三段階に分けられることがわかった。要するに「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」のイメージだ。
自宅学習をする場合は、学習者がどの段階にいるかを確認することが大切です。導入期を経ずに専門期に入ったり、専門期を経ずに発展期に入ろうとすると、上達に行き詰まりがでかねません。
導入期・専門期・発展期とは、それぞれ次のとおりです。ほとんどの人は導入期、または導入期を経ずに専門期に入ってしまっています。自宅学習では、意識して導入期から入るようにしてください。
①導入期 上達の最初のステップで、専門期の厳しい練習に耐える意欲を育てる。専門的な知識や技術を身につけるよりも、練習そのものが楽しく、夢中になって取り組む「快体験」をすることが主眼になる。
②専門期 導入期で快体験を味わい、「もっと上達したい」という欲求を持った人が、次に進むステップ。「質の高い練習」を継続して行い、礎基礎基本を学ぶ。
③発展期 熟達の最終段階。基礎基本を超えて、自分の個性的なスタイルを確立し発展させる。この時期を経ることで、前記の「機械的」あるいは「手際のいい熟達者」から「適応的熟達者」に脱皮できる。
【2】導入期の自宅学習法
導入期は《専門的な知識や技術を身につけるよりも、練習そのものが楽しく、夢中になって取り組む「快体験」をすることが主眼になる》期間です。
この期間では「専門的な知識や技術を身に付けること」が主眼となりません。しかし、「学習」という言葉には、「専門的な知識や技術を身につけること」が自然と含まれてしまいます。そのため私たちは、”真面目に”取り組もうとしてしまいがちです。
導入期における一番の障害は、この私たちの”真面目さ”かもしれません。
導入期においては、あえて何度も言いますが、専門的な知識や技術が身につかなくてもよいのです。知識や技術の習得は、二の次です。
【3】国語の導入期でお勧めのもの
国語の導入期ではSNSの利用をお勧めします。もちろんインターネットの利用には、さまざまな問題があります。しかし、読む楽しさ、書く楽しさは、SNSが最も実感しやすいでしょう。
子どもの自宅学習をサポートする場合で、子どもの年齢的にSNSの利用がまだ早い場合は、たとえばゲームの攻略ページを印刷して渡す、ゲーム実況の方法について書かれたページを印刷するなど、本人がしたいことを手助けするサポートをしてください。
難しい文章を読む必要はありません。古典や名著を読む必要もありません。自分が楽しく読める文章を読むところから始めましょう。導入期の目的は、「知識や技術を身に付けること」では”ない”ことを、思い出しておきましょうね。
noteなどのブログサービスを利用してもよいと思います。まずは書くこと、読むことを、思う存分楽しみましょう。
少し読むことに慣れてきたとき、もっとちゃんとしたものを読みたいと思ったら、中谷彰宏先生の書籍をお勧めします。一文が短く、改行も多く、1項目が2ページほどで終わるので、とても読みやすいです。また、本当にいろいろな分野の本を書いているので楽しく読み始められると思います。BOOKOFFなどにもたくさん売っていると思うので、手に取って読んでみてください。
【4】数学の導入期でお勧めなもの
数学については、マンガや映画がお勧めです。数学自体をマンガで学ぶものも多く出てきていますが、ちゃんとしたマンガや映画から数学に興味を持つほうがよいと思います。
『はじめアルゴリズム』は、週刊モーニング掲載のマンガです。子供でも安心して読めます。休校期間中にレンタルして読んでみてもよいと思います。
映画では『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』がお勧めです。実在の数学者をモデルにした映画です。数学者には壮絶な人生を送っている人も数多くいるので、数学者を好きになるところから始めてもよいと思います。
他にも、算数パズルもお勧めです。
『マンガでわかる! 10才までに遊んできたえる 算数脳パズル250』など、マンガでわかるシリーズはすべてお勧めです。プログラミングのものもあります。
【5】英語の導入期でお勧めのもの
英語は本はたくさんありますが、残念ながら真面目なものが多いです。専門期に入ってからは教材はいくらでもあるのですが、導入期でお勧めできるものが多くはありません。
『マンガでわかる! 10才までに遊んできたえる 算数脳パズル250』は、学ぶことを目的としていないのでお勧めです。バカバカしいダジャレが書かれていて、楽しく読めます。
『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』も表紙がポップで読みやすいので、比較的お勧めできます。中学生以上なら、一度は目を通してみてほしい本です。
少し専門的にはなるのですが、『ハートで感じる英文法 決定版』も面白く読めます。文法が嫌いという人には、最高の書籍になるはずです。NHKで放送されていた「ハートで感じる英文法」が元になっています。その番組を見ると、この先生達の味がよく分かります。
【6】理科の導入期にお勧めなもの
理科は、やはりYoutubeがお勧めです。
物理エンジンという、物理演算シミュレーターを使っていろいろな遊びがされています。導入期には最適です。いろいろな動画があるので、ぜひ観てほしいです。どれもバカバカしいものばかりですが、そこがいいんです。
『物理エンジンくん』は、本当に完成度が高くてびっくりします。
【7】社会の導入期でお勧めなもの
社会の導入期では、間違いなく『中田敦彦のYouTube大学』がお勧めです。
いろいろと間違いがあるという声も聴くのですが、何度も言いますが導入期では「知識や技術を身に付けること』は二の次です。大切なことは「社会って楽しい」と思うこと。
これまでは池上彰先生が、これを担ってきていました。今はオリエンタルラジオの中田敦彦さんが担っています。
【8】導入期を楽しもう
導入期では、楽しむことが大切です。
最初のほうにも書いた通り、ほとんどの人は導入期を経ていません。楽しむ経験をせずに、いきなり専門期に放り込まれています。これでは、専門期を乗り切ることさえ、難しくなってしまうのです。
自宅学習は、導入期を取り戻すことから始めましょう。その分野の楽しさをまず楽しむことから初めてください。自分が学習したい分野で、エンターテイメントを探しましょう。
マンガ、小説、映画、YouTubeなど、さまざまな媒体があります。
役に立つかどうかは一旦脇に置きましょう。
楽しそうかどうかが、最初は一番大切です。
まずは楽しむことから始めましょう。
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